株式会社マルナカ

危険な夏

FROM:山本洋
会社事務所にて・・・

暑くなってきましたね。この時期になると、杉の丸太が「危険」になってきます。

 

ズルムケ状態

山で生えている杉は、春から夏にかけて、生長するために水をたくさん吸い上げ、栄養を作ります。
水分や栄養は、木の皮〜白身部分、つまり木の外側に多く含まれます。
このため、この時期に伐った杉は非常に皮がむけやすい状態になっています。
どれくらいむけやすいかというと、皮を手で引っ張ると、そのまま4m先までずるーっとむけるくらい、むけやすいです。
ですので、山で伐って原木市場まで運んでしているうちにズルムケ状態になってしまいます。
皮を剥く手間が省けた〜、くらいならいいんですが、皮は天然の保護シート。
日に当たって割れてしまうのを防ぐ役割があります。
製材するまでに、その皮がむけてしまうのは、やはり製材する側としてはちょっと困ります。

むいたのではなく「むけてしまった」丸太

 

 

困る栄養

実はそのくらいならまだいいのですが、
この「栄養たっぷり」なのが困るのです。
この栄養めがけてやってくる「虫」。
こいつら(悪い言葉を使っていますが、それくらい憎い奴らです)が、丸太の一番外側の「うまい」部分に穴を開けて、食ってしまいます。
一番外側の部分というのは、一番節の出にくい部分。一本の丸太を割ったときに高値で取引される場所の一つです。
そんな価値の高い部分に穴を開けられたんじゃ、こちらとしてはたまったもんではありません。
一般的には「穿孔虫(せんこうちゅう)」と呼ばれる奴らです。
穴の空いた部分の近くには「食べかす」のオガクズが、灰のカスの様な姿で散らばっているところから「線香虫(せんこうむし)」とも呼ばれます。
ちょうど、線香の太さくらいの穴になるというのも、そう呼ばれる理由の一つでしょう。

まだあります。

「水分たっぷり」の丸太、ということはカビやすいのです。
そして春から夏、つまり気候も温暖。日当たり良好ともなれば、20℃〜30℃くらいの温度。
しかも、丸太には高い断熱性能があります。一度温まると、中の水分と相まって蒸し風呂状態です。
丸太の内部は絶好のカビスポットと化すわけです。

 

農産物のように「旬」があります

そんなことから、春から夏にかけて伐られる杉は、あまり製材に向いていません。
農作物に「旬」があるように、木材にも「旬」があります。
そうは言っても、この時期も丸太を伐りますし、製材もしますけどね。
その時は、なるべく品質を落とさないよう、伐ってからできるだけ時間を置かずに製材するように心がけています。
秋から冬だけに一年分の丸太を仕入れていたら、お金と場所がメチャクチャ必要ですから・・・
それに、いい時期の丸太と言っても、さすがに1年後も劣化せずに置けるかというと、そうではありません。
日差しと風で、表面が乾いていけば、少しずつ表面が割れていき、そこから水が入ってカビたりしていきます。
「何千本」という単位で丸太が入れられる冷蔵庫が安価であればいいんですが・・・
無い物ねだりはいけません。

 

自然に逆らわず

杉という自然の素材を扱っているのです。
天気と季節もまた自然です。自然に逆らっても無理な話。
自然と対話し、自然を読みながら、共生していく。
自然素材で食べさせてもらっているのだから、自然とうまく付き合っていくのが
我々人間の生きる道なのだと思います。

 

追:カビスポットですが、実は赤身(芯に近い部分)はそうではありません。
杉の赤身には天然の強い抗菌・防腐作用があり、1年2年さらしておいても決してカビることはありません。
乾燥技術が未発達だった頃は、白身の部分は全部腐らせて、赤身の部分だけを使うというのが普通だったようです。
現在も、例えばケヤキは赤身しか使わないのが一般的ですし、「銘木」と呼ばれる多くの高級樹種は芯に近い部分しか高値で取引されません。
逆に言うと、白身の混ざったグレードは、高級銘木であってもお買い得ですよ。

 

【5/30 16:00】水分と養分が通る場所について誤解しやすい表現でしたので、改めました。速水さん、ご指摘ありがとうございます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。* が付いている欄は必須項目です!

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

PAGE TOP