株式会社マルナカ

「葉枯らし乾燥」の罠

FROM:山本洋
会社事務所にて・・・

だんだん冬になってきましたが、今年は暖冬の予想だそうですね。
三重・松阪の麓では、今日はぽかぽか温かい陽気です。

冬は、いい丸太がたくさん出てくる季節

春〜夏にかけては、木が生長する季節なので、地中の養分や水分をたくさん吸います。
春先に切った木は、水がしたたるほどです。
気温も温かいので、切るとすぐにカビてきたり、虫食いが入ったりします。
ですので、山主さんもあまりいい木を切ろうとは思いません。
秋に入ると、木の水分が徐々に少なくなってきます。
その頃から、本格的に伐採作業に入ってきます。だいたい9月末〜2月頃まででしょうか。

よく手入れされた山で、計画的に伐採されているものは、
付加価値を上げるために「葉枯らし乾燥」をします。
切り倒した木を葉っぱの付いたままにしておき、山でしばらく置いておくことで
余計な水分が抜け、赤身の色合いがキレイになります。
元々は、丸太を山から引っ張り出してくるときに、水分を抜いて少しでも軽くしないと
人力では出せない、という差し迫った事情がありました。
杉の切り立てだと、ヒドいときは木の重量の倍以上の水分が入っています(含水率200%)。
今は機械で出しますが、それでも重いより軽い方が出しやすいに決まっています。

山の話はこの辺にしておきます。僕は山の方のプロではないので・・・
今日の話は「葉枯らし乾燥」について。
実はこれは、非常に誤解を招く言葉でもあります。

「葉枯らし乾燥」はどういう状態?

木材の乾燥には、複数の工程があります。

(工程) 含水率の目安
原木乾燥 200〜100%→70〜50%
天然乾燥 30〜20%
人工乾燥 6〜20%
養生 10〜15%

葉枯らし乾燥は、上記の「原木乾燥」に当たります。
原木では、よく乾かしても50〜30%程度までにしかなりません。
そこからは、製材して必要な寸法にしてから乾かします。
木材は外側から乾いていくので、丸太のままだと、内側まで乾くのに時間がかかりすぎるのです。
天然乾燥で終わらせるときは、20%程度になるまで乾かしますが、
人工乾燥の前段階として天然乾燥する時は、
乾燥に掛かる時間や歩留まりの都合(天然乾燥は割れが起きやすい)で
そこまで乾かさないケースが多いですね。
なお人工乾燥の種類として、温度で区分すると高温乾燥、中温乾燥、低温乾燥などに分けられます。
その後、一定の養生期間をおいて、外気になじませます。

「牛」と精肉とステーキはどれがうまい…??

これを見ていただくと分かるように、葉枯らし乾燥は、乾燥工程の一部です。
ですが、葉枯らし「乾燥」と呼ばれているので、あたかも葉枯らし乾燥で全てが終わり、という印象を与えがちです。
また、ある議論では、高温乾燥か、天然乾燥か、葉枯らし乾燥か、ということを
論じられていました。
これらは比較できないことが分かるでしょう。

比較ではなく、工程が違うのです。

同じ肉を、焼くのか煮るのか炒めるのか、で比べるのではなく、
「牛」そのものと、肉屋に並んだ精肉と、料理されたステーキを
どれが一番うまいか、と論じているようなものです。
議論になりませんよね。
うまいかどうかは牛そのものや熟成期間、調理方法によって変わるし、
ましてや出される場所やシチュエーション、タイミングでも感じ方が違います。

ですが、このような議論が、あたかも当然のように行われています。

住まい手にとって、家は一生モノ。
どうか言葉に惑わされることなく、「本当に正しいのはなにか」を掴んでいただきたいと思います。

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