空間が果たす役割
‘比重’について書くことで杉の素材感を文章として伝えることができるんじゃないか
湊利真です
杉の魅力は「しなやかさ」と「あったかさ」だと言いました。
いろんな木の中で杉の‘比重’は低いです。針葉樹の中でも低いです
内装材に、特にフローリングに外国の硬い木や広葉樹が多く使われるのは比重が高く過酷な室内環境に対応できその影響を受けにくい ともなって床鳴りや隙間、割れや変形のリスクも少なくて済む。キズも付きにくい
まったくその通りです
自分たちを含む作り手や売り手はそのリスクを最大限小さくすることで信用を守り 信頼を得るのです
当たり前の話です
じゃなぜ自分たちは杉というリスクを扱うのか この素朴な素材をみんなに知ってもらおうと頑張ってるのか
それはしなやかであったかいからです
10年20年30年50年100年 経年変化は風合いになり 主張しすぎず暮らしの中にあり だれかの足腰を支え 湿度環境を守り あったかい空気を蓄える 夏場はサラサラしてるし やわらかい匂いがする
特に有難がられる事もなく空気みたいにいつもそこにあって大きく機能している
‘比重’が低いということがその機能の一端を担っていて空隙率なんて言葉もある
何もないたくさんの空間があるということ
「ない」が「ある」というのもヘンな話ですが
しなやかさ あったかさ 断熱 保温 香り 保湿 他いろいろ
空間がその役割を果たしている。
‘比重’とは水を1としてどれだけの値であるかと考えられる。杉0.38という数字がよく使われるが個体差は大きい
机上の数字やデータを知り 現場での感覚や経験と擦り合わせていく そんな中で技は進み 本当に良いものとそうでないものがはっきりと見えてくる
『そもそも備わっている高い機能性が損なわれていないもの』
それが本当にいいものだ。
自然の物の構造や機能は過不足なく完璧で、杉の木もそのほかではなく 日本の暮らしと調和する高い実用性がすでに備わっている
それをそのままの形で残し、余分なとこを削ぎ落してくような
木材乾燥技術とはそんな作業で、それらの構造 機能 実用性の全部をしょーもないものにしてしまうリスクもまたはらんでいる。
と話はそれましたが
比重が低いということをどうとらえるかはその人が決めればいいと思う
ただそういうものの見方があるということを知っていてもらいたいのです。
(杉の気乾材を水に入れると浮きます。あたりまえではありますが)