
長い間、僕は悩んでいた。
単に「杉の内装材」を作る工場ではない。
なにか特別な「価値」を杉という木に載せて、出荷していると思っている。
その「価値」とは一体何なのか・・・
ある時気がついた。
「カッコイイ」ということだ。
無垢の杉をそのまま使って、床暖房できたらカッコイイだろう。
無垢の杉で床から階段、カウンター、開口枠、ドアまでできたらカッコイイだろう。
ちょっとダメージのある杉を、荒々しく加工して土足用の床にできたらカッコイイだろう。
もちろん、カッコ良さは人それぞれ違う。それは多様性という意味だ。
木は「異方性」と言って、製材する方向によって顔が変わる。性質も変わる。
中でも杉という木は、非常に個性が強くて、同じ杉でも色や年輪、性質がかなり違う。
だから「扱いにくい」と言われるし、その割には桧よりも安いとされているので、
いわば手間ばかりかかる子どもみたいなものだ。
だから、おもしろいと思う。
手の入れ方によっては、杉はとてもカッコ良くなるのだ。
「杉を使うと和風になってしまう」って?だれがそんなことを決めた?
杉は先人が家を建てるのに植えまくった木だ。今その杉は、柱として家を支える年齢を超えて、
柱にはちょっと太すぎる、いわばメタボ状態になりつつある。
メタボになった山は、切ってしまわないとそれ以上成長できない。
だからといって、使えないわけじゃなくて、むしろフローリングなんかには最適の木だったりする。
そんな木を、「バイオマス」と称して燃やしてしまってもいいんだろうか?
それだけではない。僕らのいる三重、紀伊半島には、じいちゃんの、
そのまたじいちゃんの代から丁寧に手入れをした、うなるように美しい木がわんさか生えている。
だが、それは切らない。相場が安すぎるからだ。木を切るのに国の補助金はジャブジャブ出ている。
けど、それは山に携わる「人」の話。切られた「木」そのものは、どうなるの? 茶室にしか使えないの?
幅広の無垢の杉を塗装して、今風の建築に合うようにできたらカッコイイだろう。
濃淡のきつい杉を、カラーコーディネートしてそろえたらカッコイイだろう。
杉を洗い出し加工して、年輪を肌で感じられるようにしたらカッコイイだろう。
「桧より安いから」なんて言って、原木から燃やしてバイオマスだなんて言って安売りしたら、
杉と言う木に未来はない。今でさえ安くて補助金なしでは切れないのに。
杉を、カッコ良くしたい。カッコイイ木になって、世の中にデビューさせるのだ。
代表 山本 洋